1. リモートファースト企業が旧来の旅費規程で直面する問題

リモートファースト(原則リモートワーク)を採用する企業では、旧来の旅費規程がそのまま使えないケースが多くあります。旧来の旅費規程は「毎日オフィスに出社することが前提」で設計されており、リモートファースト企業の働き方と根本的に合わなくなっているためです。

主な問題点は次の通りです。

  • 「出張起点」がオフィスになっているが、社員はオフィスに出社しない:旧来の規程では「会社(オフィス)から離れた場所での業務=出張」と定義されているが、リモートファーストでは社員は通常オフィスにいない。
  • オフサイトミーティングや合宿の旅費処理の根拠がない:チームで特定の場所に集まるオフサイトミーティングや合宿は旧来の「出張」とは異なり、規程に根拠がない。
  • リモートワーカーがオフィスに出社した際の交通費の扱いが不明確:原則リモートの会社で社員がオフィスに出社した場合、これは「通勤」なのか「出張」なのか、旧来の規程では答えが出ない。
  • コワーキングスペース利用費の処理の根拠がない:社員が自宅外のコワーキングスペースで業務を行った場合の利用費を旅費として処理するか否かが不明確。

これらの問題を解決するために、リモートファースト企業は旅費規程を現在の働き方に合わせて全面的に見直す必要があります。

2. 「出張」の新しい定義:リモートファースト時代の考え方

リモートファースト企業の旅費規程では、「出張」の定義を従来とは異なる視点で再設計することが必要です。

新しい「出張」の定義の方向性

リモートファースト企業では「出張」を次のように再定義することを推奨します。

「出張とは、業務上の必要により、従業員の通常の業務遂行場所(自宅またはその近辺)を離れ、一定の距離・時間以上移動して他の場所で業務を遂行することをいう」

この定義のポイントは「オフィス起点」ではなく「従業員の通常業務場所(自宅等)起点」に切り替えることです。これにより、自宅を起点に顧客訪問・展示会参加・チーム合宿などに赴く移動が「出張」として旅費規程の対象となります。

「出張」に含む行為の列挙

定義に加えて、「出張に含む行為」を列挙しておくことで処理の迷いをなくせます。例えば以下のような列挙が考えられます。

  • 顧客・取引先への訪問
  • 展示会・セミナー・業界イベントへの参加
  • 会社が主催・指定するオフサイトミーティング・チーム合宿
  • 契約先のオフィスへの定期訪問
  • 公的機関・金融機関・税務署等への業務上の訪問

逆に「出張に含まない行為」も明示しておくと混乱を防げます(例:個人的な研修・資格取得のための移動、プライベートな移動など)。

3. オフサイトミーティング・チーム合宿の旅費処理

全員リモートの会社でも、チームで特定の場所に集まるオフサイトミーティングや合宿(チームリトリート)は重要な業務活動です。これらの旅費処理を整理します。

オフサイトミーティングの旅費処理

会社が費用を負担して実施するオフサイトミーティングは、参加者全員の旅費(交通費・宿泊費)と施設利用料が法人の損金となります。旅費規程に「会社が指定または承認するオフサイトミーティングへの参加は出張として取り扱う」と明記しておくことで根拠が明確になります。

チーム合宿の旅費処理

合宿(チームリトリート)は、業務上の合宿(企画・戦略立案・チームビルディング等)として費用を法人が全額負担することができます。ただし、明らかに「観光・レクリエーション」の性格が強い場合は交際費や福利厚生費として処理する必要が生じます。業務目的の合宿として処理するためには、アジェンダ(議題)・参加者・成果物などの記録を残してください。

日当の支給について

オフサイトミーティング・合宿の参加者に対して、旅費規程に基づく日当を支給することができます。宿泊を伴う場合は宿泊日当(通常より低額)を、日帰りの場合は日当を支給します。日当の金額は旅費規程の区分(近距離・中距離・遠距離等)に従います。

4. リモートワーカーが出社する場合:交通費 vs 旅費

リモートファースト企業の社員がオフィスに出社した場合の交通費の処理は、状況によって「通勤費」「旅費」のいずれかになります。この区分が実務上の最大の論点のひとつです。

「通勤費」として処理する場合

毎月一定回数(例:月2〜3回)オフィスに出社することが雇用契約・業務委託契約で定められており、その出社が「定期的・反復的な通勤」としての性格を持つ場合は「通勤費」として処理します。通勤費は非課税限度額(1ヶ月あたり15万円)の範囲内で法人の損金となります。

「旅費」として処理する場合

普段は自宅でリモートワークを行っており、特定の業務目的(重要な会議・取引先との商談等)のために例外的にオフィスに出社した場合は「出張」として旅費処理することができます。この場合、旅費規程に「リモートワーカーが業務目的でオフィスに出社した場合は出張として取り扱う」と定める必要があります。

通勤費と旅費のどちらが有利か

社員の居住地がオフィスから遠い場合(例:大阪在住の社員が東京のオフィスに出社)、旅費として処理すれば日当も支給できるため、通勤費より有利なケースがあります。旅費規程に明確な根拠を設けたうえで適切に処理してください。

5. 顧客訪問・展示会参加の旅費処理

リモートファースト企業でも、顧客訪問や展示会への参加は対面で行う必要があるため「出張」として旅費が発生します。これらは従来の出張旅費と同様に処理できますが、リモートファースト企業特有の注意点があります。

リモートファースト企業では「なぜオンラインで済まさなかったのか」が税務調査で問われるケースがあります。対面訪問・展示会参加の必要性(例:「初回商談は対面が必要」「現物の確認が必要」「展示会でのネットワーキングが目的」など)を出張申請書に記載しておくことで、税務上の根拠が明確になります。

6. コワーキングスペース利用費の旅費への組み込み可否

リモートファースト企業では、社員が自宅近くのコワーキングスペースを利用するケースも多くあります。このコワーキングスペース利用費を旅費に組み込めるかどうかは、利用の目的と形態によって異なります。

旅費として処理できるケース

出張先(自宅から離れた場所)でのコワーキングスペース利用料は旅費として処理できます。例えば顧客訪問のために都内に出張した際に使用したコワーキングスペースの利用料は「旅費交通費」として損金算入できます。

旅費として処理できないケース

自宅の近所のコワーキングスペースを毎日利用する費用は「旅費」ではありません。この場合は「賃借料」または「雑費」として処理するのが適切です。あるいは「在宅勤務手当」の一部として支給する方法もあります。

リモートファースト企業の費用種類別・旅費 vs 経費の判断基準
費用項目 分類 処理方法 根拠・条件
顧客訪問の交通費 旅費(交通費) 旅費規程に基づき全額損金 訪問記録・業務目的の明示
顧客訪問時の日当 旅費(日当) 旅費規程の日当額を損金算入 旅費規程への明記が必要
オフサイトミーティングの旅費 旅費(交通費・宿泊費) 旅費規程に基づき全額損金 会社が承認した合宿・ミーティングであること
リモートワーカーのオフィス出社交通費(定期) 通勤費 通勤手当として支給(非課税限度内) 定期的・反復的な出社の場合
リモートワーカーのオフィス出社交通費(臨時) 旅費(出張扱い) 旅費規程に基づき損金算入・日当支給も可 旅費規程に「リモートワーカーの臨時出社は出張」と明記
出張先でのコワーキングスペース利用料 旅費交通費・雑費 全額損金算入 出張中の業務利用、領収書保管
自宅近くのコワーキングスペース利用料(日常的) 賃借料・雑費 損金算入(旅費ではない) 在宅勤務関連費用として処理
展示会・セミナーへの参加旅費 旅費(交通費・宿泊費) 旅費規程に基づき損金算入 業務目的の参加、参加記録の保管

7. リモートファースト企業の旅費規程テンプレート

以下に、リモートファースト企業向けの旅費規程テンプレートの主要条文を示します。

第1条(目的)この規程は、当社における役員・従業員の出張に伴う旅費・日当の支給基準を定めることを目的とする。

第2条(出張の定義)出張とは、業務上の必要により、従業員の通常の業務遂行場所(自宅または会社が指定する在宅勤務場所)を離れ、他の場所で業務を遂行することをいう。なお、以下の場合を含む。①顧客・取引先・公的機関等への業務上の訪問 ②当社が承認するオフサイトミーティング・合宿への参加 ③展示会・業界イベントへの業務上の参加 ④在宅勤務者が業務目的で会社のオフィスに出社する場合

第3条(出張起点)出張の起点は、従業員の通常業務場所(自宅住所)とする。旅費はこの起点からの移動に基づいて計算する。

第4条(旅費・日当の支給基準)近距離出張(片道100km未満):日当3,000円、交通費実費、宿泊費実費(上限12,000円)。中距離出張(片道100〜300km未満):日当5,000円、交通費実費、宿泊費実費(上限15,000円)。遠距離出張(片道300km以上):日当7,000円、交通費実費、宿泊費実費(上限18,000円)。

第5条(精算手続き)出張後は出張報告書(業務内容・訪問先・費用明細)を提出し、代表者の承認を得て精算を行う。

8. TAXAVEでリモートファースト企業の旅費を管理

リモートファースト企業では、社員が全国各地でリモートワークをしており、出張の起点・移動距離・費用の計算が従来より複雑になります。TAXAVEではリモートファースト企業向けの旅費規程設定・距離別日当の自動計算・出張申請・精算管理を月額4,500円で一元化できます。小規模なリモートファースト企業でも無理なく導入できる価格設定です。