1. 「外回り」と「出張」の区別の仕方

営業・販売業において、旅費規程の設計で最も重要な問題の一つが「外回り(日常の営業活動)」と「出張(旅費規程の対象となる業務移動)」の区別です。この区別が曖昧なままだと、すべての営業活動に日当を支給することになり、過大な旅費計上として税務調査で問題になるリスクがあります。

一般的な考え方として、「外回り(日常の営業活動)」とは、営業所・オフィスを起点として近隣の得意先を回る日常業務であり、旅費規程の日当対象外(交通費実費精算)として扱います。一方「出張」とは、日常の営業エリアを超えた遠方での業務であり、旅費規程に基づく日当の対象となります。

区分 外回り(通常業務) 出張(旅費規程の対象)
移動距離の目安 片道20〜30km未満 片道20〜30km超(規程で基準を設定)
宿泊の有無 なし(日帰り) あり(または日帰りでも遠方)
交通費の処理 交通費実費精算(日当なし) 旅費規程に基づく日当+交通費精算
事前申請 不要(行動予定報告で代替可) 出張申請書の提出が必要
典型例 担当エリア内の得意先訪問 遠方の新規顧客開拓、地方展示会参加

旅費規程には「営業所から片道30km超または移動時間90分超の顧客訪問・営業活動を出張とする」といった距離・時間基準を明記することが重要です。この基準がないと、「外回り」として処理すべき近場の営業活動に日当を支給してしまうリスクがあります。

また、毎週同じ遠方顧客を定期訪問している場合は、「定期外回り」として日当なし・交通費実費精算とする取り扱いも合理的です。旅費規程に「定期的な週次訪問は通常業務として扱う」といった条項を設けることも一案です。

2. 日帰り営業出張と宿泊営業出張の日当の差の設定

旅費規程では、日帰り出張と宿泊出張で日当の金額に差を設けるのが一般的です。宿泊出張では宿泊による疲労・生活の不便さがあるため、日帰り出張より高めの日当を設定することが合理的とされています。

区分 日帰り出張日当(目安) 宿泊出張日当(目安) 比率の目安
営業部長・マネージャー 4,000〜8,000円 8,000〜15,000円 日帰り:宿泊 = 1:2程度
ベテラン営業担当(主任・係長) 3,000〜6,000円 6,000〜12,000円 日帰り:宿泊 = 1:2程度
一般営業担当 2,000〜4,000円 4,000〜8,000円 日帰り:宿泊 = 1:2程度
新入社員・若手営業 1,500〜3,000円 3,000〜6,000円 日帰り:宿泊 = 1:2程度

日帰り出張日当と宿泊出張日当の比率は「1:2」程度が一般的です。ただし、「日当を2倍にすれば必ず問題ない」というわけではなく、設定した日当の金額が業界相場・社会通念上の相当額の範囲内であることが重要です。

また、出張から帰社する時刻によって日当を変動させる「時間区分型」の設定を採用している企業もあります。例えば「出発が早朝(6時前)または帰社が深夜(21時後)の場合は日当を50%増額する」といった規定です。ただし、この場合は時刻の記録(出発・帰社のタイムスタンプ)が必要になります。

3. 営業車・社用車の燃料費・維持費の旅費規程での扱い

外回り営業や出張で営業車・社用車を使用する場合、燃料費・維持費の処理方法を旅費規程に明記することが重要です。主な処理方法には以下の3つがあります。

実費精算方式:給油レシートに基づいてガソリン代を実費精算します。最も正確ですが、給油レシートの管理・提出が必要です。高速道路料金・駐車場代は別途実費精算します。

km単価方式:走行距離に応じてkm単価(例:15〜25円/km)を設定し、月次で走行距離を集計して支給します。実態に即した精算ができますが、走行記録の管理が必要です。

定額支給方式:月額定額(例:月10,000〜30,000円)の車両手当を支給します。シンプルですが、実際の走行距離と大きく乖離する場合があります。定額が過大な場合は給与として課税される可能性があります。

処理方式 メリット デメリット・注意点 適した場面
実費精算(給油レシート) 実態に最も正確 レシート管理が煩雑 不定期・遠方出張が多い場合
km単価方式 走行距離に応じた公平な精算 走行記録の作成・管理が必要 日常的に自家用車・社用車で外回りする場合
定額支給(車両手当) 処理がシンプル 実態との乖離・給与課税のリスク 月の走行距離がある程度一定の場合

社用車(会社所有の営業車)の場合、燃料費・保険料・車検費用などは通常「車両費」として法人が直接支出するため、旅費規程の対象外となります。ただし、高速道路料金・駐車場代は出張時の実費として旅費規程に基づき精算するケースが多いです。

4. 複数得意先を回る「巡回型出張」の旅費処理

営業・販売業では、1日に複数の得意先を順番に訪問する「巡回型出張」が一般的です。この巡回型出張の旅費処理には、いくつかの設計上の工夫が必要です。

起点・終点の設定:巡回型出張では、出発地(営業所またはその日の最初の訪問先)と帰着地(営業所または当日最後の訪問先)を明確にし、その間の移動全体を1回の「出張」として処理します。途中で複数の得意先を訪問した場合も、1日全体を「1回の出張」としてまとめて申請するのが実務的です。

日当の計算方法:巡回型出張の場合、1日全体を「1日出張」として日当を1回分計算します。複数の得意先を訪問したからといって日当を複数回計算するのは誤りです。

出張報告書の記載:巡回型出張の場合、訪問した得意先の名称・住所・訪問目的・商談結果を出張報告書に記載することが重要です。複数の訪問先を一覧表形式でまとめると、報告書の作成・確認が効率化されます。

項目 記載内容(巡回型出張の例)
出張日 2026年6月10日
出発地・帰着地 東京営業所(出発・帰着)
訪問先一覧 ①A社(神奈川県横浜市)②B社(神奈川県川崎市)③C社(神奈川県相模原市)
移動手段 JR・小田急(交通費精算)
出張の区分 日帰り出張(最遠移動距離:45km)
日当 日帰り出張日当 3,000円

5. 営業担当者の旅費精算の効率化:承認フローの設計

営業部門では出張の頻度が高く、旅費精算の申請・承認業務が経理担当者・上司にとって大きな負担になりがちです。承認フローを適切に設計することで、この負担を軽減しながら適正な旅費管理を実現できます。

出張申請は事前に:原則として出張の申請は事前に行い、上司の承認を得た後に出張するという流れが理想です。ただし、緊急の得意先訪問では事前申請が難しい場合もあるため、「緊急出張の場合は当日または翌日の事後申請を認める」といった特例条項を設けることが実務的です。

精算は月次一括で:営業担当者の出張が頻繁な場合、毎回都度精算するのは煩雑です。月末に1か月分をまとめて申請・精算する月次一括方式を採用することで、申請者・承認者双方の負担を軽減できます。

デジタルツールの活用:紙の申請書・領収書での旅費精算は、書類の作成・確認・保管に多くの時間がかかります。TAXAVEのような旅費管理システムを活用することで、申請・承認・保管を電子化し、業務効率を大幅に改善できます。

承認フロー メリット 適した組織規模
営業担当→直属上司のみ(1段階) シンプルで迅速 小規模チーム(5人以下)
営業担当→課長→部長(2段階) 複数チェックで適正性が高い 中規模チーム(10〜30人)
営業担当→上司→経理(2段階) 経理チェックで計算ミスを防ぐ 旅費金額が大きい場合
システム自動チェック→上司(1段階) ルール逸脱を自動検知。最も効率的 規模問わず、システム導入時

6. 営業担当者の日当相場(職種・業界別)

営業・販売業の旅費規程における日当の設定にあたっては、業界・職種ごとの相場を参考にすることが重要です。以下は営業担当者の日当相場の目安です。

業界・職種 日帰り出張日当 宿泊出張日当 特記事項
BtoB営業(製造業・IT・商社) 3,000〜6,000円 6,000〜12,000円 遠方顧客への出張が多い
BtoC営業(保険・不動産・金融) 2,000〜4,000円 5,000〜10,000円 近距離の外回りが中心
代理店・販売店営業 2,500〜5,000円 5,000〜10,000円 巡回型の外回りが多い
営業マネージャー・部長 5,000〜10,000円 10,000〜20,000円 役職に応じた差別化
代表・役員(営業兼務) 5,000〜15,000円 10,000〜25,000円 旅費規程の上限内で設定

日当の設定は「高すぎず低すぎず」が基本です。過低な日当は営業担当者の士気・モチベーション低下につながる可能性があり、過高な日当は税務上の問題につながるリスクがあります。業界相場を参考に、自社の経営状況・営業担当者の業務負担に見合った金額を設定しましょう。

7. TAXAVEで営業旅費の管理を自動化する方法

営業・販売業は出張頻度が高く、旅費精算の管理が最も煩雑になりやすい業種の一つです。TAXAVEを導入することで、営業担当者の旅費管理業務を大幅に効率化できます。

スマートフォンから即時申請:営業担当者が得意先訪問後にその場でスマートフォンから旅費を申請できます。後でまとめて入力する手間がなくなり、申請漏れも防げます。

旅費規程に基づく自動計算:距離・時間・宿泊の有無に応じて、旅費規程で設定した日当額を自動計算します。計算ミスや規程外の申請をシステムが自動チェックするため、承認者の確認負担も軽減されます。

巡回型出張の一括申請:複数の訪問先を含む巡回型出張も、訪問先リストと移動ルートを入力するだけで旅費を自動計算。月次集計レポートで部門別・担当者別の旅費コストを即座に把握できます。

月額4,500円から利用でき、1人の個人事業主から複数の営業担当者を抱える中小企業まで対応しています。1か月間無料で試せるため、まずはお気軽にお試しください。

8. まとめ:営業チームの旅費管理を適正化するポイント

営業・販売業の旅費規程を適正に設計・運用するためのポイントをまとめます。

まず「外回り」と「出張」の区別を明確にする距離・時間基準を旅費規程に明記することが最重要です。次に、日帰り出張と宿泊出張の日当差を合理的な比率(1:2程度)で設定し、業界相場から大きく外れない金額にすることが重要です。営業車・社用車の燃料費処理方式(実費・km単価・定額)を旅費規程に明記し、実態に即した精算を行いましょう。巡回型出張については、1日を1回の出張として処理し、訪問先一覧を出張報告書に記載するルールを設けることが必要です。そして、旅費精算の申請・承認フローを効率化するためにTAXAVEのようなシステムの導入を検討することで、営業担当者・管理者双方の負担を大幅に軽減できます。